
【Portrait of a Barista】藤本彩子 / 鎌倉店
ウッドベリースタッフのオリジンや内面に迫る「PORTRAIT OF A BARISTA」
今回は鎌倉店の藤本さんに、6つの質問を答えていただきました。
Q1 生まれ育った街について教えてください。
父の仕事の関係であちこちを転々としたので、生まれたのは静岡県ですが、すぐにブラジルに移り住んで 5 歳まで暮らし、それから日本に帰国して静岡、東京の練馬と吉祥寺で学生時代を過ごしました。でもせっかく海外で生活するという経験ができたのに、私が覚えているのは、幼稚園のお散歩タイムで行ったアイス屋さんのカラフルなベンチや、バナナ市場でカートに乗っていたことなど、主に食べものにまつわる思い出ばかりです。
いまは、鎌倉に引っ越して一年が経ちましたが、海や山に囲まれたスローな感じがとても気に入っています。自然が身の回りにあることでなんだか時間と気持ちにゆとりが生まれたような感じです
Q2 バリスタを目指したきっかけは?
最初は空港のグランドハンドリングというお客様の手荷物を飛行機まで運ぶ仕事に就いたのですが、仕事に慣れてきたころにコロナの第一波が直撃してしまったことが、自分の人生を改めるきっかけになりました。そんなときに観た『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(監督:ジョン・ファブロー、2015 年)という映画にとても刺激を受け、食べることがむかしから好きだったこともあって、自分のつくったもので笑顔や幸せを生むことができるって素敵なことだな、お店をもってみたいなと思い、カフェで働くことに決めたんです。
カフェで働きはじめたころは、コーヒーに対して焙煎度合いや酸味や苦味のバランスに違いがあるという程度の認識しかなかったのですが、ウッドベリーに入ってからそれが覆され、自分の好みも変わりました。ふと幼少期を思い返すと、母が料理に使う味噌の種類を変えたとき、すぐに気がついたのは家族のなかで私だけで、むかしから母に「あなたは飲食の道が向いている」と言われていたんですよね。この仕事が自分に合っているという表現が正しいのかわかりませんが、コーヒーのいろいろなフレーバーを感じることができているいま、その奥深さにどんどん夢中になっています。
Q3 好きなコーヒー豆を教えてください。
エルサルバドル/ヒマラヤ農園スーパーソニックがとくに印象に残っています。この豆が発売されたのは私が入社してたった数カ月の、まだフレーバーの違いもなんとなくしかわからないころでした。それなのにこのヒマラヤは、飲んだときに、ブルーベリーやクランベリー、ラズベリーなど、ひとことで「ベリー」といってもさまざまな違いが明確にあるんだと理解できたんです。もともとベリー系のフレーバーをもったコーヒーが好みだったこともあり、私にとって特別なお豆です。
Q4 いまハマっているカルチャー(本や音楽、映画など)を教えてください。
これまで J-POP でも洋楽でもアップテンポな曲を聴くことが多かったように思いますが、改めて考えてみると、鎌倉にきてから音楽の趣味が変わったような気がします。最近はスローな感じの曲、とくにカントリーや R&B なども聴くようになりました。お店で流れているレコードの影響もあるかもしれませんが、鎌倉という土地の影響が大きかったように思いますね。そのなかでもDan+Shay というカントリー・デュオがお気に入りです。特別気分があがるとか、元気がでるという感じではなく、日常でふと聞こえてきて自分のいる空間を邪魔しない感じ。心にスッと入ってくるような歌声や曲調なので、彼らの音楽を聴きながらコーヒーを飲むのが幸せな時間です。
Q5 最近食べて美味しかったものを教えてください。
鎌倉の長谷にある「なみまちベーグル」のシナモンベーグルが、ここ最近食べたもののなかでいちばん美味しかったです。鎌倉には朝早くからやっているお店が多いので、一緒に働いている美佑さんと朝活をしてから出勤することがよくあります。朝活のあと、なみまちベーグルさんからウッドベリーまで歩いた海沿いの空気感も最高でした。鎌倉にお越しの際には、ぜひ皆さんにも立ち寄っていただきたいお店のひとつです。
Q6 これからの未来のためにしていることは?
美味しいものをたくさん味わうことです。朝活の話ともつながるのですが、せっかく鎌倉にきたからには、ただ働くだけじゃなくて街を語れるような人になりたいという想いがあります。
それに、美味しいものを食べて嫌な気分になる人はいないと思うんです。なので、自分が出会った食べものをお客様との会話のきっかけにしたり、反対にお客様から聞いたおすすめのお店を訪れることもあります。私自身が食べることが好きというのもありますが、そうした積み重ねでみんなで笑顔や幸せな時間を共有できたら嬉しいですし、きっと自分の将来のためにもなると信じています。
オリジナルマガジン"PNEUMA" ISSUE33より抜粋