記事: 【Portrait of a Barista】諏訪良太郎 / 用賀店
【Portrait of a Barista】諏訪良太郎 / 用賀店
ウッドベリースタッフのオリジンや内面に迫る「PORTRAIT OF A BARISTA」
今回は用賀店の諏訪さんに、6つの質問を答えていただきました。
Q1 生まれ育った街について教えてください。
東京の日野市に生まれ育ち、社会人になるまで22年間暮らしていました。それほど有名な市ではありませんが、いわゆる多摩ニュータウンのような開発された街ではなく歴史のある街なので、もしかしたら歴史好きの方であれば「新撰組のふるさと」としてご存じの方もいらっしゃるかもしれません。山や川など自然豊かで、子どものころは「浅川」という川に入って遊んだり、隣の八王子市にある高尾山に行ったりしていました。どちらかというと奥多摩や山梨県に似た雰囲気があって、私はその雰囲気がとても好きなのでよい街に育ったなと思っています。
Q2 バリスタを目指したきっかけは?
大学入試の勉強をしているときにカフェインを摂ろうと思ったのがきっかけでコンビニや自販機でコーヒーを買って飲むようになりました。最初はどれも「苦くて目が覚める感じ」と思って飲んでいたのですが、大学生になってコーヒー屋さんで浅煎りのコーヒーを飲んだときに初めて味のちがいを感じることができて。空間としてもお店によってぜんぜん雰囲気がちがうところも魅力的に感じて、コーヒー屋さんを巡るようになりました。
そのため、前職は不動産の営業職をしていましたが、いつか自分もお店に立って美味しいコーヒーを淹れられる立場になりたいとずっと考えていました。コーヒー屋さんの仕事は、目の前でお客さんが幸せそうな顔をしているのをみられたり、「美味しいです」といってもらえたり、身近でお客さんのためになれていると実感できる仕事だなと思っていたんです。
じつは前職に就いているとき、ウッドベリーの用賀店から30秒くらいのところに住んでいて、お客さんとしても何度かきたことがありました。インフォメーションカードを読んだり、テイストコメントや農園さんの背景を聞いてから飲んだコーヒーは別格で、自分もそういう顧客体験を生みだせるような存在になりたいと思ったことも、バリスタを目指したきっかけです。
Q3 好きなコーヒー豆を教えてください。
ひとりのお客さんとして飲んだ豆のひとつですが、2022年に初めてウッドベリーがダイレクトトレードで買いつけたときの、ミレイディ農園のパカマラ種がいちばん好きです。それまでどこのお店で浅煎りのコーヒーを飲んでも酸味が強いという印象をもっていたのですが、ミレイディのハンドドリップを飲んだときに初めて「甘さ」をすごく感じたんです。くわえて、品質向上にかける農園の想いや訪れた数ヶ月後に農園主さんが亡くなられてしまったというお話など、背景にあるエピソードを聞いて、味わいとストーリーの両面からグッと心を掴まれてすごく印象に残っています。
Q4 いまハマっているカルチャー(本や音楽、映画など)を教えてください。
どちらかというとアウトドアなタイプで、最近は休日に登山にいくことが多いです。自分はすこし心配性で、無駄なことを考えてしまうところがあるのですが、登山にいくとよい意味で頭が真っ白になってリフレッシュできます。なにも考えずに身体を動かして登った頂上で景色をみていると、起こるかどうかわからないことを心配するよりもやったほうがいいことがみえてきて、前向きな気持ちになれます。
先日は山梨県の大菩薩嶺にいきました。それほどハードな道ではないのですが頂上からみえる景色は絶景で、富士山と湖をみながらコーヒーを淹れて二〜三時間過ごしました。山の上で飲むコーヒーは、寒さや、運動の後ということもあって、平地とは別格の美味しさがあると思います。すごく贅沢な時間でしたね。
Q5 お店での流儀・ポリシーを教えてください。
一日の味を決めるのは朝のバリスタの仕事なので、前日からの引き継ぎがどれだけ多くても自分が担当するときは早く出勤するなどして必ず30分はエスプレッソの調整の時間を確保するようにしています。調整のなかでとくに意識しているのは、調整のためにエスプレッソを落とす回数をできるかぎり減らすということです。狙った味を出すまでにコーヒーを無駄にしたくないので、三回以内に調整を終わらせることをひとつの理想として取り組んでいます。
Q6 これからの未来のためにしていることは?
一緒に働いているスタッフや、家族・友人など、まずは自分の身の回りの人を幸せにしたいと思っています。自分のことを気にかけてくれている人たちにどれだけ恩返しできるか、自分がどれだけ彼ら彼女らの力になれるかという意識を大事にしながら日々を送っています。仕事面でいえば用賀店だけでなくウッドベリー全体がよりよい方向に進んでいけるよう、自分が力になれることを考えて実行していきたいなと思いますし、とくに家族にはこの仕事に就くときに反対されると思ったら背中を押してくれて、いまでもとても応援してくれているので、すこしでも幸せにできたらと思っています。
オリジナルマガジン"PNEUMA" ISSUE30より抜粋