【Portrait of a Barista】鈴木魁 / 代官山店
ウッドベリースタッフのオリジンや内面に迫る「PORTRAIT OF A BARISTA」
今回は代官山店の鈴木さんに、6つの質問を答えていただきました。
Q1 生まれ育った街について教えてください。
神奈川県横浜市の、東白楽駅や東神奈川駅に近いエリアで育ちました。みなとみらいまで自転車で15分ほどで、都内も電車一本でいける、立地のいい場所でした。でも、思い入れのある町というとサッカーで通っていた品川の青物横丁のほうが愛着があります。叔父さんがサッカークラブをやっていた関係で、5歳から小学校6年生まで週に4回は通っていたんです。サッカーの技術はもちろんですが、小さいながらもひとりで一時間ほど電車に乗らなければいけなかったので、時間管理の意識や責任感が身について、学ぶことが多かったです。
Q2 バリスタを目指したきっかけは?
小さいころから、人を笑顔にできる仕事がしたいと思っていました。それで、高校卒業とともにサッカーをやめてアルバイトを始めるときに選んだのが、コーヒーのチェーン店でした。いろいろな大手チェーン店で働きましたが、地元のコーヒー屋さんに行ったとき、当時店長を務めていた方の接客に惚れこんだのがとくに大きかったです。すぐに応募して、その方が退職されるまでのあいだすこしだけ一緒に働かせてもらいました。
その方はひとりひとりのお客さんのことをしっかり覚えていて、「このあいだは〇〇を頼んでくれましたよね」とか「最近は何かにハマっているんですか?」など、声をかけてきめ細やかで丁寧な接客をされていました。その接客を受けて、こういう人になりたいと思ったのが、バリスタを目指したきっかけですね。
Q3 好きなコーヒー豆を教えてください。
コーヒーを好きになったきっかけは、コロンビアのエル・パライソ農園のライチを飲んだことでした(ウッドベリーでも取り扱っていたようですが、飲んだのは別のお店でした)。エル・パライソはコーヒーとは思えないほど派手な味をした豆なのですが、ウッドベリーで働くのと並行していろいろなコーヒーを飲むうちに、自分が本当に好きなのは甘さがあって後味の余韻が長いコーヒーだということに気がついたんです。
ウッドベリーで取り扱ったなかだと、エルサルバドルのロマ・パチャ農園のパカス種、ナチュラル・プロセスのコーヒーがすごく好きでした。アプリコットやブルーベリー、ミルクチョコレートのフレーバーがあって、たまにパイナップルのようなトロピカルな印象も感じられます。エル・パライソのような派手な味ではありませんが、ロマ・パチャはホットのドリップで飲むとじんわりと甘く、落ち着く感じがして、とても美味しかったです。
Q4 いまハマっているカルチャー(本や音楽、映画など)を教えてください。
最近は銭湯にハマっています。テレビで、湊三次郎さんという廃業寸前の銭湯を再建する活動をされている方が紹介されているのをたまたま見て、ウッドベリーの店舗を自分たちでつくったりしていることとすこし似ているなと思ったんです。それからいろいろな町にあるローカルな銭湯にいくようになりました。
銭湯はどこかコーヒー屋さんと似ていて、たとえば近所の銭湯にずっと行っていると常連さんの存在に気がつくんです。600円、700円くらいの単価で、日常の延長線上で幸せな気持ちになれたり、リラックスできるのがすごく素敵なことだと思います。
Q5 お店での流儀・ポリシーを教えてください。
朝、お店を開けるときはすこし早めに出勤して、店内の植物すべてに丁寧にお水をあげると決めています。天井から吊るされている植物も多いので、葉っぱに埃が乗っていたら拭き取ったり、高いところにあがって霧吹きで葉水もあげています。そうすると一日を気持ちよく始められて、いい営業につながると思っています。店長の奥野さんに教えてもらったオープン作業のひとつでもあるのですが、継続しているおかげか、店内の植物も盛々になってきました。
Q6 これからの未来のためにしていることは?
13年間サッカーをやっていたこともそうですが、何事においても日々継続することが未来の自分につながると思っています。
高校のサッカー部が厳しかったので、毎日10キロ走ったり、夏合宿では三日間で100キロ走ったりするんです。「なんでそんなことするんだろう?」と思うことも多かったのですが、最終的にはそれが良い結果に結びつくということを実感しました。
だから、大学生になってから始めたコーヒーも、いまは質よりも圧倒的に量をこなすことが大事だと思っています。休みの日は必ずコーヒーを飲みに行ったり、営業中は誰よりも味をとる気持ちで、朝だけじゃなくて一日中エスプレッソの調整をしています。
継続しているうちに、自分が弱点だと思っていたことが、急にストロングポイントに変わるタイミングがあるんです。意味がないと思うようなことでも、継続しているうちに自分のためになって、できることが増える瞬間がやってくる。サッカーで得たそうした経験はコーヒーを学ぶうえでも活きているし、すごく大切にしています。
オリジナルマガジン "Pneuma" ISSUE27 より抜粋