【Portrait of a Barista】澤口 優稀/ 学芸大学店
ウッドベリースタッフのオリジンや内面に迫る「PORTRAIT OF A BARISTA」
今回は学芸大学店で店長を務める澤口さんに、6つの質問を答えていただきました。
Q1 生まれ育った街について教えてください。
神奈川県横浜市、いわゆる浜っ子です。横浜駅から20分ほどのところに家がありました。うらやましがられることも多いのですが、横浜駅周辺はガヤガヤしている場所なので、私はむしろのんびりしているところに憧れていました。その意味では桜木町や鎌倉のような自然のある場所に30分ほどで出られるのは好きでしたね。
Q2 バリスタを目指したきっかけは?
きっかけはラテアートでした。ラテアートは視覚でお客さんを喜ばせられるのでわかりやすいんですよね。わっと驚くようなアートを書けるようになりたくて大会にも出場しました。大学の授業を前期でできるだけ履修して、後期はずっとカフェでアルバイト。毎日のように仕事終わりに牛乳を10本買ってきて練習するほどでした。
でも、あるときべつのお店で飲んだカフェラテの味わいが、ふだん自分が淹れているラテとぜんぜんちがうことに気づいて、味のほうに興味が移っていきました。浅煎りで、飲んだ瞬間に華やかで紅茶のようなフレーバーがひろがる。いま思えばゲイシャ種だったのかもしれませんが、こんなラテもあるんだと思ったのを覚えています。
Q3 好きなコーヒー豆を教えてください。
基本的に人に淹れてもらったコーヒーはどれも好きですが(笑)、とくに思い出に残っているのはコスタリカのガンボア農園です。入社してスペシャルティコーヒーを扱うようになり、エスプレッソの調整の練習でいつも使っていたコーヒーでした。だからこそ当時は、私がいちばんこのコーヒーを理解していたと思うし、最後まで誰よりもおいしく淹れないととも思っていました。
ナッツやきび糖系のフレーバーが主体で、シトラス系のすっきりした酸が感じられ、くわえて、抽出をがんばればストーンフルーツのようなとろっとした果実感の出るコーヒーでした。エスプレッソがこの豆の日はみんなが嫌がるくらい調整が難しかったのですが、うまく調整できると本当にバランスがよく、おいしい豆でした。ハンドドリップだと出にくいストーンフルーツのような果実感がエスプレッソだと引き出しやすかったので、ドリップよりもアメリカーノなどで飲むのが好きでした。
Q4 いまハマっているカルチャー(本や音楽、映画など)を教えてください。
本を読んだり映画を観ることもあるのですが、なにかにハマったことが全然ないんです。音楽にかんしては、ピアノを6年やっていたし、トランペットやバイオリンもやっていたのですが……。強いていえば美術館にいくことは好きです。先日もゲルハルト・リヒターを観にいきましたが、ちょっと難しかったです(笑)。
カルチャーといっていいかわかりませんが、焼き菓子や甘いものが好きで、休みの日にはコーヒーのお供に必ずつくっています。このあいだはファーブルトンというカヌレに似たフランスの伝統菓子をつくりました。オーブンに入れるまでの調理時間が10分くらいで済むので、手軽につくれるお菓子です。ときどきつくりすぎて冷蔵庫がパンパンになってしまうこともあるくらい、お菓子づくりが好きですね。
Q5 お店の気に入っているところを教えてください。
学芸大学店は客席の真ん中にカウンターがあり、目の届かない場所がないところが好きです。コーヒーを淹れながら店内をすべて見ることができて、がんばればどの席のお客様とも話すことができる。お客様がコーヒーを楽しみながら本を読んだり、のんびりしている姿を見るのが好きです。
Q6 これからの未来のためにしていることは?
今後も自分のことを好きでいるために、どんな状況でも上を向きつづけていきたいと思っています。入社して最初に配属された代官山店から渋谷店に異動になったとき、当時の渋谷店では社長や、いまは品質管理に回っているスタッフたちが現場に立っていました。私は、そうした先輩方と現場で働いた最後の世代です。好きなものや興味のあるものに熱量をもって、諦めずに打ちこみつづける姿勢に衝撃を受けて、私もそうなりたいと思ったことが、私がウッドベリーで働きつづけている理由なんです。だからこそ、下の世代のスタッフたちにもそういう姿を見せていきたいんです。
私自身、それほど好きじゃない仕事をなんとなくつづけるよりも、好きなことをしんどくてもがんばりつづけるほうが断然好きなんです。それに、きっと自分の好きなことに出会えない人もいるなかで、自分は好きなものに出会えて、しかも仕事にすることができている。高みを目指して努力しつづけられる環境にいられること自体がすごく幸運なことだと思っているので、どんなに大変でも挫けずに努力をつづけていきたいです。