
【Portrait of a Barista】入野来未 / 渋谷店
ウッドベリースタッフのオリジンや内面に迫る「PORTRAIT OF A BARISTA」
今回は渋谷店の入野さんに、6つの質問を答えていただきました。
Q1 生まれ育った街について教えてください。
兵庫県の宝塚市に生まれました。大阪に近い南側に街があり、北側には山がひろがっています。兵庫の人は山の有無で北と南をわけて考えると聞いたことがありますが、宝塚市はまさにそんな地形をしています。宝塚歌劇団のほかにも、ウィルキンソン炭酸の発祥地としても有名です。
いまも一年に二回ほどは実家に帰って、そのたびに大阪のカフェを巡っています。どのお店にいっても、店員さんがむかしから知り合いだったかのように親しみをもって話しかけてくれるところが大阪らしいなと思います。
Q2 バリスタを目指したきっかけは?
自分がヴィーガンだったことやオーガニック関連の会社で働いていたこともあって、もともとはそうしたライフスタイルをひろめたいと思ってウッドベリーに入りました。都内でもヴィーガン対応しているカフェは多くないので、ほとんどのお店に足を運んだと思いますが、そのなかでもとくにホスピタリティや熱意に溢れていたウッドベリーを選びました。
そして、バリスタのみなさんの姿をみるうちに、私もちゃんとコーヒーと向きあいたいと思うようになりました。その理由はいくつかありますが、ひとつはコーヒーの味だけでなく、生産者さんに支払う賃金や地域貢献などもふくめ、農園さんのことにも目を向けて豆を選んでいることをしっかりとお伝えしたいと思ったこと。もうひとつは、その豆を美味しくするためにどうしたらいいかを、つねに考えて淹れている人たちが集まっていることが大きかったです。
ヴィーガンメニューにかんしても「ヴィーガンだからこれぐらいの味にしかならない」と考えている人はおらず、一般的な料理やお菓子と同じように美味しいものをつくっているところが素敵だと思います。
Q3 好きなコーヒー豆を教えてください。
エクアドル/クルス・ロマ農園のゲイシャ種です。バリスタのトレーニングをはじめた最初の一、二カ月は自分で淹れたコーヒーが美味しいとひとつも思えなかったのですが、初めてちゃんと美味しく淹れられたと思えたのが、クルス・ロマでした。トレーニング前も含め、それまで自分がなかなか感じられなかったゲイシャ種特有の華やかなフレーバーを明確に感じられたのは、豆の高いポテンシャルのおかげだったと思います。それ以降は、べつの豆でもフレーバーが出せていない状態がわかるようになったと思います。
飲み方としては、販売が夏に近かったこともあり、アイスで飲むことが大好きでした。ジュースを飲んでいるような、水々しいオレンジを思わせるジューシーな印象と、ゲイシャ種の持つフローラルな華やかさがいちばん感じられて、とても美味しかったです。
Q4 いまハマっているカルチャー(本や音楽、映画など)を教えてください。
いままで長篇の小説を読むことが多かったのですが、最近は詩を読むようになりました。まだ読みはじめたばかりですが、知人におすすめされた谷川俊太郎や最果タヒなどの現代詩を読んでいます。
現実的な問題として小説よりも空き時間にさっと読むことができるということもあるのですが、小説のようにひとりの人生を追うのではなく、その一部を切り取るようなイメージで読めるのが新鮮です。ある種、カフェもお客様の生活の一部に触れる場所だと思うので、それと同じで誰かの生活の一部を知ることができるのがとても楽しいです。
Q5 あなたのリラックス法を教えてください。
家事を小まめにすることです。ひとり暮らしをしていると自分の好きな時間に家事をするので、どうしても不規則になりがちで、生活がゆるんできてしまうんです。それをたとえば洗濯の頻度を増やしたり、朝すこしだけ早起きをしてルーティン化してみたり、あるいはジャージではなく寝間着で寝るようにしたり、生活のひとつひとつのことに対して真面目に取り組むようにす ると、自然と心が安らぐことに気がつきました。家事をちゃんとして、心を休める。「やりたくない」と思う前に行動に移すことが、最近の私のリラックス法です。
Q6 これからの未来のためにしていることは?
「とりあえずやってみよう」精神をもつことです。今年、ジャパン・ブリュワーズ・カップ(JBrC)という競技会に出ることに決めたのですが、そのことで関わる人やインプットする情報の質が大きく変化したのを実感しています。大会で使う豆を選ぶ必要があるので、焙煎部の方がサポートしてくれたり、ふだんお店で提供しているもの以外にも品評会などで高いスコアをとっている豆を飲む機会が増え、ひとりでカフェにいくときもコーヒーを選ぶ基準も変わりましたね。出場を決めたからこそコーヒーとの向き合い方が変わった部分も多く、何事においても「とりあえずやる」ことをいつも念頭におくように心がけています。
オリジナルマガジン"PNEUMA" ISSUE34より抜粋